事業主側の相談

Q. 労働保険って加入しないといけないの?

A. 労働者を一人でも雇った場合は加入しなければいけません

 労働保険とは、「労働者災害保障保険(一般的に労災保険と言われます)」と「雇用保険」の二つの保険制度の総称で、労働者(正社員のみではなく、アルバイト、パートタイマー等も含む)を一人でも雇用した場合に会社形態・規模・業種を問わず加入義務が発生します。

Q. 社会保険って加入しないといけないの? 抜けられない?

A. 事業所が法人の場合、社長一人でも加入しなければいけません

 法人の事業所は社会保険の強制適用事業所となり、社長一人の事業所であっても加入義務が発生します。また個人の事業所であっても、常時5人(社長含む)以上の従業員がいる事業所である場合、一部の業種(農林漁業、サービス業など)を除いて加入義務があります。

Q. アルバイトや試用期間中の従業員は社会保険に入れなくてもいいの?

A. 労働条件次第では社会保険に入れなければいけません

 パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は被保険者となります。1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上である方は被保険者として扱われます。 また試用期間中の従業員であっても、無期雇用として雇い入れた従業員は入社の時点で被保険者として取り扱われます。

Q. 36協定って何? やらなくてもいいの?

A. 36協定を締結しないで従業員に時間外・休日労働をさせるのは違法です

 36協定とは正式には「時間外労働・休日労働に関する協定」といい、従業員にたとえ30分でも法定労働時間外の労働や休日出勤をさせる場合にはこの協定を締結し、労働基準監督署へ届け出なければなりません。
 なお、36協定の届出を行えばいくらでも残業をさせることができるわけではなく、延長して働かせることができる時間の上限も設定しなければなりません。

Q. 問題従業員がいるので解雇したい

A. 従業員を解雇するには、解雇するに足る客観的・合理的理由が必要です

労働契約法第16条(解雇権濫用の法理)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 過去の判例上、解雇が正当として認められるためには下記の要件が必要となります。

  • 解雇に関する法律上の規制に違反していないこと
  • 解雇の基準があらかじめ就業規則等に定められていること
  • 再教育や配置転換などといった従業員の解雇回避努力を行っていること
  • 解雇の理由が合理的であり、社会通念上相当であること
  • 30日以上前に解雇予告を行う、またはそれに代わる解雇予告手当を支払うこと
    (労働基準監督署の許可を取った場合は例外)

 過去の判例上、解雇は時間をかけて慎重に行う必要があるため、カッとなって「明日からこなくていい!!」というようなことをしてしまうと、逆に訴訟リスクを背負うことになりかねないのでご注意ください(ただし、現在議論されている「解雇の金銭解決制度」の動向次第ではこの辺りも大きく変わってくる可能性はあります)。

Q. 固定残業代を導入していれば残業代を払わなくていいの?

A. 固定残業代として認められるためにはいくつかの要件が必要です

 近年増えつつある固定残業代(みなし残業代、定額残業代)ですが、過去の判例上残業代として有効と認められるためには下記の要件を満たす必要があります。

  • 固定残業代制度を採用する旨の労働契約が合意されていること
  • 通常の賃金部分と固定残業代に当たる部分が明確に区別されていること
  • 固定残業代が何時間分の残業に相当し、それを超過した場合には超過時間分の差額を支払うこと

 しばしば求人情報で見かけるような「月給○○円(みなし残業代含む)」といった表記をしている場合は、裁判となった場合に無効となることが多いのでご注意ください。

労働者側の相談

Q. 有給休暇を取ろうとしたら上司に断られた

A. 原則として会社は有給休暇の取得を拒否することはできません

労働基準法第39条第5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 原則として有給休暇は従業員が事前に時季を指定して請求により発生するものであって、取得理由に関わらず、会社にこれを拒否する権利はありません(判例上、例外は事業場に対するストライキに参加する場合に限る)。
 使用者には時季変更権が与えられていますが、こちらについても「事業の正常な運営を妨げる場合」に限って行使できるものであり、単なる業務多忙や代替要員の確保等の努力を行わずに時季変更権を行使することはできません。
 ただし、原則として有給休暇は事前に請求するものであるため、休んだ日に対して事後に有給休暇を請求する場合においてこれを認めるかどうかについては会社との取り決めによるものとなります。

Q. そもそもうちの会社には有給休暇がないと言われた

A. 労働基準法上有給休暇の権利は自動的に発生します

労働基準法第39条第1項
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 会社から年次有給休暇制度は無いと主張されたとしても、全労働日の8割以上出勤を行った労働者に対して年次有給休暇が法律上付与されることとなります。労働基準法で定める基準は最低限度のものであるため、これを下回る労働条件で働かせることはできません。
 ただし、有給休暇の付与日数を会社から従業員に対して通知する義務までは無いため、そのような場合には有給休暇残日数の把握を従業員自身で行っていただく必要があります。